そんなサイトで、助川幸逸郎氏は、「村上春樹になってはいけない」という、隔週で全一二回の連載をやっている(原稿用紙にすると最終的に200枚以上になる)。直接的な利益を強調した記事だらけの空間に、ポツンと普通に村上春樹論、その図々しさが素晴らしい。これは、どうでもよくみえて、画期的なことだと思う。
内容として、村上春樹は、バブル的に消費されたように見えながら、実はバブル以降に通用する要素こそが、本質だった的な話が毎回のざっくりしたパ
ターンである。つまり、「なってはいけない」の変な題名も、バブルの夢にいまだまどろむ読者への否定と同時に、可能性の肯定として、向けられているわけだ。その発表場所を利用した、企みもまた面白い(まだ連載折り返し地点なので、詳しいコメントはしない)