内田春菊さんによる紹介は、以下のような感じでした(細かい相づち等省略しています)。
内田春菊 これ、あれですよ、「ライ麦畑」のことよくでてきますよ。
大竹まこと 女の子を殺さないために…。
内田 村上春樹さんの小説の中では、なぜ、そのセックスした女の子が死んでしまうのか、というようなポイントから、恋愛小説についての分析を書いた本です。
大竹 そう。村上春樹の最新作の最後は、女の人が死なない、かったなあ。
大竹 あ、いま、過去のやつはね
内田 川端(康成)から、庄司薫から、その恋愛小説の共通点を、分析した、という。
大竹 おもしろそう。
内田 おもしろいです。私の「南くんの恋人」にも触れてくれてて、それで送っていただいたんですけども。
大竹 そうですか。
山口もえ 「南くんの恋人」も春菊さんですか?
内田 そうそうそう。
山口 えー! 思いっきりドラマ見てましたよ。
(敬称略)
ご紹介いただき、ありがとうございます。
なお、大竹まこと氏の「村上春樹の最新作の最後は、女の人が死なない、かったなあ」(『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』)は、その通りで、たしかに『ノルウェイの森』のように「最後」に女の子が死んでしまうタイプの小説ではありませんでした。しかし、巡礼の過程で、「やはり」というべきか、高校時代の女友達シロが殺されていたことが明らかになります。
なお、内田春菊さんは、ちょうど今年、『南くんは恋人』・・・今度はちよみではなく、南くんの側が手のひらサイズに小さくなってしまう漫画を連載しました。
南くんの恋人 : 25年ぶり復活 新作は“立場逆転”南くんが手のひらサイズに
大変申し訳ないことながら連載は未読につき、夏に出るという単行本を楽しみに読みます。
さて、『色彩を持たない多崎つくる』について少し。本作は、絶交された理由を知るために、死んでしまったシロを除く、アオ・アカ・クロの高校時代の同級生に次々にあっていく小説でした。
この象徴的なアオ・シロ・アカ・クロの四人の同級生のシンボルカラーについて、五行思想的にいうと、「青=東、白=西、赤=南、黒=北」と周縁に対応します。しかも主人公の「多崎つくる」は、四人の同級生の中心にいたという設定です。だから五行思想的には、「多崎つくる」は、「中心=黄土」(イエロー)の役割のはずなのに、なぜか「色彩を持たない」。
とりあえず、庄司薫の赤白黒青四部作(薫くんシリーズ)を喪失した「多崎つくる」が、それを回復していく過程と読んでみることもできそうです。