東京中日新聞2012年5月24日夕刊に、「〈好きな女の子とは、しない〉ための戦い」という庄司薫論を記載していただきました。イントロはこんな感じ。
かわいい女の子たちからモテモテ、頭も良くて、有名ブランド高校にいて、頼れる友達もいて、しかも健康で深刻な悩みもなく、家はお金持ち。こんな奴は、今時の言葉でいう「リア充」である。元記事自体が、原稿用紙4枚くらいなので、要約できず、申し訳ない。リア充の「薫くん」が今読まれる意味について考察したものです。もしご興味のある方は、図書館で読んでいただけたら嬉しいな、と思います。
さて、新聞記事に書ききれなかった(しかし一応自分用メモとしてまとめた)補記のようなもの。
新潮文庫について
今年の3月からはじまった新潮文庫リニューアル発行によって、庄司薫のプチブーム(?)がはじまった。その流れの中に、上記の庄司薫の今日的意味を問いなおす記事もある。だからリニューアル新潮文庫化の特徴について語ってみよう。
もちろん誰でも手に入る簡単な情報を、再整理するだけ(一切内容には触れず、書誌ぽく?)
「薫くん」シリーズ=赤白黒青四部作の新潮文庫書影。赤緑黒青ではない…(先行する赤白の二冊だと『ノルウェイの森』上下巻と同じクリスマスカラーになる計算?・・・とりあえず書店で二冊並べば目立つ)。
中公文庫は著者自身が装丁している。一方新潮文庫のデザイナーは、長崎訓子氏。前者は味わいとファンごころをくすぐるが、後者は、やはり餅は餅屋というべきか。それぞれのシンボルカラーを強調したスタイリッシュなデザイン。
中公文庫vs新潮文庫 購入価格
赤黒白青四部作の総購入価格だと、中公文庫は2,900円、新潮文庫は2,154円。差額746円! なんと新潮でそろえると、中公と比べて、文庫約一冊分お得についてしまうコストパフォーマンスぶり。中公は、まだ潤沢に在庫があるようだし、不良在庫にならないのか、心配になる。余計なお世話? うん。
(『白』は、なぜか中公→新潮でも、解説の女性枠の伝統が引き継がれている)。平均36歳も若返っている。 簡単にいえば、中公は、山崎正和氏以外は、1937年生まれの庄司薫(福田章二)より一世代以上、年上が書いていた。一方、新潮の解説は、1950年生ま れの「薫くん」より少し年下(つまり最も多いリアルタイム読者層…完結時くらいに「薫くん」の年齢に追いつく世代)が書くようになった。
ただしそれぞれの文庫刊行時の平均年齢で考えると 50代前半のほぼ同じ年令の人が書いている(赤白黒は1973年、青は1980年に中公文庫化)。解説者適齢期というのはあるのかもしれない。生まれ月や発行月は無視した、ざっくりした計算だが、こんな感じである。
このように一新された表紙に、若返った解説陣、お求めやすい価格と三拍子そろった。更に加えて、文庫2ページほどだが、著者・庄司薫自身による新 たな後書き「あわや」が追加されている。さて、どのくらい売れているのか。すごく売れたら、その「今売れてる!」という情報が宣伝になるので大本営発表さ れるのだけども。
追記)一つだけ、著者装丁以外に中公文庫を選ぶメリットをあげると、やはり高い分だけ、紙や作りがいいような気がする。新潮文庫はすぐにくたびれてしまうが、中公文庫は湿気に強く、大切に読めば長持ちするような気がする。あくまで気がするだけの個人的感想だよ。